第8章 持続可能な行財政運営の推進と政策形成能力の向上によるまちづくり

第1節 実効性の高い行政経営等の推進

 <現状と課題>
 近年,少子・高齢化,国際化,高度情報化など大きな社会環境の変化に伴い,行政に対する住民のニーズが多様化・高度化し,従来にも増して質の高い行政サービスへの期待が高まっています。
 また,地方分権の進展に伴い,国・県の持つ権限が市町村に移譲される中で,住民に最も身近な基礎的自治体である市町村においては,自主的・主体的な政策判断によりそのニーズを的確に反映したきめ細かな施策を展開することが求められており,こうした市町村の自己責任能力の違いが,それぞれの行政サービスの質や地域活力の差となって現れる時代になっています。
 このような社会情勢の変化に的確に対応し,10万人都市にふさわしいまちづくりを進めるため,本市では,「薩摩川内市市政改革大綱」を策定しました。今後は,同大綱に基づき「市民志向の行政改革」を進め,市が果たすべき役割について不断の見直しを行い,行政機構の強化等を図りながら,実効性の高い行政経営を実現していくことが重要です。将来を見据えたビジョンの下で,各種事務事業の目的や必要性,緊急性,成果等を市民に対して明確にし,市民の目線からの事務事業の評価,見直しが継続的に行われる仕組みづくりに取り組むとともに,受け手側の立場に立ったサービスの提供,スピードとコストの観点からの事務処理の改善等に努める必要があります。
 また,限られた経営資源を基に,本市の自己責任能力を向上させるためには,これまで以上に各職員の政策形成能力を高めることが不可欠となります。新しい時代にふさわしい地方自治の確立に向けた受皿づくりのため,行政の様々な分野で新たな課題に積極果敢に取り組む実行力と意欲ある人材の育成が求められます。今後,このような人材を確保・育成していくためには,市民全体から期待される職員像を明確にするとともに,職員の資質や能力,意欲を開発・活用・評価し,適切な人事配置を行う仕組みを体系化し,組織全体の活性化を進める必要があります。
 さらに,今後,行政の説明責任の確保と市民サービスの維持・向上を前提として,民間の活力や資源を導入することが可能な業務については,これらを積極的かつ計画的に活用し,質の高いサービスをより効率的・効果的に提供することが求められています。





<施策の体系>

<計画の内容>

1 実効性の高い行政経営の推進

 (1) 効率的・効果的な市役所組織の実現

  ア 部局機能の強化
 各部局機能の強化を行い,加えて各部局の経営方針を定めて自立化を進め,支所とも連携を図りながら新たな行政課題や市民の多様なニーズに柔軟かつ的確,さらに迅速に対応できる市役所組織を構築します。
 また,各種事務事業などの評価制度を導入し,その結果を市民に分かりやすく提示しながら,事務事業の執行体制を不断に改善していきます。
  イ 職員数の適正な管理
 市の財政に占める人件費の抑制が求められる中,今後,市職員のうち,いわゆる「団塊の世代」の定年退職を迎えます。そこで,「薩摩川内市職員定員適正化方針」を策定し,公的サービスの提供に影響がないように職員数の適正管理に努めます。嘱託員及び臨時職員についても,その業務内容と職員数に応じた配置数の適正化を図ります。
 また,国や県からの権限移譲や新たに発生する行政事務などに対しても,職員定員適正化方針に基づき適正な管理を行います。

 (2) 行政サービスの向上

  ア 質の高い行政サービスの提供
 常にサービスの受け手側の立場を意識し,市民のニーズの的確な把握に取り組むなど,市民の視点に立ったきめ細かで質の高い行政サービスの提供を図るとともに,さわやかで心の通う接遇に努めます。
  イ 事務処理の迅速化・効率化
 窓口業務,事務プロセス,施設業務などを成果と費用及び時間コストを意識して,既成のルールにとらわれず,弾力的に見直します。
 また,電子市役所などのIT(情報通信技術)を活用した業務改革を進めながら,サービスの質を低下することなく事務の適性化,迅速化,高度化を図ります。

 (3) 実行力と意欲ある人材の育成等
 職員の政策形成能力の向上と職場の活性化を図るため,職員の積極的な姿勢,達成感,意欲を引き出す新たな人事・給与制度,職員の持っている能力をより一層向上させ,スピードとコストの意識啓発を組み込んだ職員人材育成基本方針などを早急に定めます。また,職員各自が,「市民」は,市役所の「顧客」であるということを常に意識し,行動します。
 さらに,「まちづくりの主役は市民」であり,市民の立場に立った市民本位の公共サービスを遂行するため,市民に親しまれ,信頼されるよう努めます。

2 公共施設の整備・管理

 (1) 市有施設の活用等
 市が所有する施設については市民にとって使いやすく利用価値があるように改善・整備を行いながらその有効活用を図ります。
 また,類似施設の統合やその役割を終えたもの,利用頻度の少ないものなどの廃止,使用者が限定されている施設の民間譲渡等を行い,適正な財産管理を行います。

 (2) 民間活力の活用
 民間の活力や資源を導入することが可能な業務については,行政サービスの向上と地域経済活性化の観点から,「薩摩川内市アウトソーシング方針※」を基に積極的かつ計画的に外部委託を推進します。
 また,市有施設も,指定管理者制度の導入など民間活力を活かした管理・運営を図り,併せてその評価を行います。
 なお,施設の改修,整備の必要が生じた場合は,PFIを含むPPPなど民間資金の活用を積極的に推進します。
※薩摩川内市アウトソーシング方針⇒本市の市政改革に関する取組の中で,市有施設や事務事業の外部委託化又は民営化,さらには,施設の統廃合などの方針を示したもの

第2節 健全で安定的な財政運営の推進
 <現状と課題>
 本市の財政は,歳入においては市税等の自主財源が少なく,歳出においては,人件費や公債費などの義務的経費が多くを占めており,そのため投資的経費に振り向ける財源が少なく弾力性に乏しい財政構造となっています。
 近年,一定の景気回復の兆しはみられるものの,中長期的な見通しは依然として不透明であることや少子・高齢化の進行が顕著であることなどから,市税等の収入の伸びが見込めない中で,歳出面では更に義務的経費が増加するなど今後も厳しい財政状況が続くものと予想されます。一方,地方分権の進展に伴う行政権限の拡大など,地方行政としての役割・責任がますます増大し,さらに成熟社会の中で市民の行政サービスに対するニーズが多様化・高度化してきている状況にあります。
 このような状況に対応していくためには,長期的な行政経営の視点から,より一層の健全で効率的な財政運営を進めるとともに,自立性の高い,安定した財政基盤を確保するなど,持続可能な財政構造を確立することが重要な課題となっています。

 (1) 健全で効率的な財政運営の推進
  ア 中長期的展望に立った財政運営の推進
 今後10年間において持続可能な財政構造への転換を図るため,「薩摩川内市財政健全化計画・中長期財政運営指針」を踏まえた予算編成を行い,市債残高の削減に努めながら経費全般の徹底的な見直しを進めます。
  イ 企業会計制度の導入
 資産や負債等のストック(保有)情報として企業会計制度の考えに基づくバランスシート(貸借対照表)や行政コスト計算書を作成し,行財政運営に係る財務状況や運営コスト情報を市民に明らかにし,財政運営の透明性を高めます。
  ウ コストの縮減・合理化
 職員のコスト意識の向上を図り,資産の有効活用や経営の在り方などを積極的に見直します。
また,入札・契約制度については,透明化,適正化,多様化を図りながら,受注者と一体となった工事コストの縮減に取り組みます。
さらに,継続的に交付している補助金について,その目的,果たしてきた役割,市民への影響などを検証し,整理・統合を図ります。

(2) 安定した財政基盤の確保

  ア 自主財源の確保
 市税の課税客体の実態を的確に把握し,公平な課税に努めるとともに,市民の納税意識の高揚と収納率の向上を図り,自主財源の確保に努めます。
  イ 計画的な起債
 将来の財政負担を考慮して,標準財政規模の推移を見極めながら,事業の適正な選択と計画的な起債に努めます。
  ウ 使用料・手数料の適正化
 各種市民サービスの対価として徴収する使用料・手数料を受益者負担の視点から検証し,公平な基準により,透明・公正なものになるよう努めます。

<施策の体系>

<計画の内容>

 1 持続可能な財政構造の確立