第2編 基本構想

第1章 計画の目標

第1節 基本理念

 第1次薩摩川内市総合計画におけるまちづくりの基本理念は,「“地域力”が奏でる“都市力”の創出」です。
 この基本理念は,「“地域力”を育み,新しい地域創出を目指す」,「“都市力”を最大限に発揮する」,「市民参画によるまちづくりを進める」,「実効性の高い行政経営を進める」の四つの視点を柱とします。
 これからのまちづくりは,従来にも増して,「地域自らが考え,地域自らが取り組む主体的な地域づくり」を進めていくという視点が求められます。
 そのため,地域が持つ資源を再確認し,その歴史や特性を最大限に活かしつつその魅力に更に磨きをかけるともに,人々の価値観や社会経済の変化など,様々な環境に対応した取組を展開していくことが必要となってきます。
 合併前の市町村は,それぞれが持つ特性や立地条件を踏まえた様々なまちづくりを着実に行い,多様性,個性を創出してきました。貴重な地域資源を育みながら,長年にわたって積み重ねてきたまちづくりの成果が,現在の姿となって地域の人々の暮らしを支えています。このようなまちづくりの成果を尊重しつつ,南九州の拠点都市として,時流に応じた新たな歴史を刻みながら新しい個性を創出する「地域らしさ」を重視したまちづくりを展開し,これを市内外に積極的に情報発信していくことが必要です。また,各分野において,こうしたまちづくりの中心的な役割を担う情報発信能力のある多様な人材を育成していくことが求められます。
 一方,本市全体で資源や施設を共有し,拠点的機能の分担・連携を図る中で,「都市力」を向上させ効果的に発展していくためには,魅力の高い都市機能を充実させるとともに,本市内の連携及び市外との交流を促進する快適で利便性の高い社会基盤の整備・強化等が必要です。
 このようなことから,それぞれの地域や地区コミュニティの特性を活かしながら10万人都市の潜在力を最大限に発揮し,これらが連携することにより新しい価値を創出していくという方針の下,「“地域力”が奏でる“都市力”の創出」をまちづくりの基本理念(基本的姿勢)とします。
 これにより,市民一人一人が住むことに誇りの持てるまちづくりが可能となり,本市の全国的な認知度も向上するものと考えられます。

 1 “地域力”を育み,新しい地域創出を目指す

 本市を構成する“まち”には,そこで生活を営んできた人々によって長年受け継がれた伝統や文化が形成され,地域の特性として醸成されてきました。本市は,面積が広く,島しょ部を有する自治体であることから,地域特性を活かした多彩な価値を有する「地域力」の向上を図ります。

 2 “都市力”を最大限に発揮する

 魅力の高い都市機能を充実させるとともに,本市内の連携及び市外との交流を促進する快適で利便性の高い幹線道路の整備や効率的な公共施設の整備など,生活・産業基盤の整備を図ります。また,都市機能が強化された一体感のあるまちの醸成に努め,10万人都市の魅力を最大限に発揮できるまちづくりを展開します。

 3 市民参画によるまちづくりを進める

 市民と行政が同じ目標・視点に立ったまちづくりを進めるため,必要な情報を共有できるように情報公開を積極的に進めるとともに,市民の意見や意向を幅広く吸収し,施策展開に反映させる広聴の充実に努め,市民参画のまちづくりを進めます。
※市民参画⇒行政の持つ情報を積極的に公開し,市民と行政が情報を共有しながら,政策等の形成過程において市民の意見を活かしていくこと。

 4 実効性の高い行政経営を進める

 10万人都市にふさわしいまちづくりを進めるため,行政組織のスリム化等による実効性の高い行政経営を進め,行政課題の多様化・高度化に対応した行政サービスの充実・強化を図ります。

第2節 将来都市像

 本市の速やかな一体化を促進し,基本理念に掲げた「地域力」を高め,将来における「都市力」を向上させるための目標として,本市の将来都市像を「市民が創り 市民が育む 交流躍動都市」と設定します。
 本市は,都市機能が集積している地域,緑豊かな農山村や趣のある温泉街地域,変化に富んだ海岸線を有する地域など,多彩な特性を持つ地域が結集した自治体であり,それぞれの特性に根ざす多彩な文化や風土が形成されています。加えて,市民生活を支え交流の基盤となる多くの資源が蓄積されているとともに,九州新幹線鹿児島ルートや南九州西回り自動車道の開通が見込まれるなど,広域的な交流・連携の基盤が整備されつつあります。
 本市においては,南九州の拠点都市として,また,県都鹿児島市の隣接都市として,本市の持つ「多彩な特性と基盤の蓄積」を最大限に活かし,それぞれの潜在力を更に向上させるとともに,互いの連携を強くすることにより相乗効果を高め,自立性の高いまちづくりを進めていくことが求められています。
 また,自然や歴史的・文化的資源と人々の営みというような「地域力」を育てながら「都市力」を発揮する新しいまちづくりを実践する主体は市民です。この「地域力」は,市民一人一人が,あるいは地区コミュニティが,お互いの信頼関係を築きながら共有できる将来像を描き,その実現に向かって協働し努力していくことにより育まれます。
 このような考え方を基本とし,「市民が創り 市民が育む 交流躍動都市」を本市が目指すべき将来都市像とします。

第3節 市域の構成イメージ

 本市の自然,産業,文化や土地利用等の特性を活かした均衡ある発展を目指すため,本市を大きく三つのゾーンに分け,次のように振興を図ります。
 また,人やモノの活発な交流・連携を促進するために,「交流・連携軸」を設定します。

 1 ゾーンごとの振興方向

  (1) 都市文化ゾーン(川内の市街地)
 「にぎわいと活力に満ちた,風格のある市街地(水景文化空間)の形成」
 この区域は,九州新幹線鹿児島ルートやJR鹿児島本線,肥薩おれんじ鉄道,南九州西回り自動車道,国道3号,国道267号などが交差する交通の要衝に位置します。商業・教育・文化・医療・行政等の都市機能が集中するとともに,工業団地には多くの企業が進出するなど,南九州における経済・物流の拠点です。
 また,幹線道路や鉄道を利用して多くの入込み客を導く本市の玄関口であり,中心部を貫流する川内川を活かしたうるおいある“水景文化空間”としての役割も担っています。
 このため,都市基盤の整備や魅力ある商業機能の創出,本市の顔にふさわしい風格のある市街地の形成,市内各地域との道路・交通網や生活基盤等の整備により,市民の交流拠点となる機能充実に努めます。
 以上のことにより,「にぎわいと活力に満ちた,風格のある市街地(水景文化空間)の形成」を基本として,豊かで利便性の高い市民生活のための都市基盤の整備に努めます。
※水景文化空間⇒癒しのある水辺,温かさあふれる緑など,雄大な川内川を中心とする自然環境を舞台に,伝統ある歴史・文化を磨きながら,住民一人一人が自らの地域への誇りや愛着を実感しつつ,いきいきと快適に生活し続けることのできる,都市アメニティ(都市環境の快適性,魅力ある環境,生活の質など)豊かな生活空間を象徴的に表した言葉

  (2) 田園文化ゾーン(樋脇・入来・東郷・祁答院及び川内の田園地帯)
 「水と緑と温泉に抱かれた,美しく趣のある田園地帯の形成」
 一級河川「川内川」流域であるこの区域は,水と緑に抱かれた肥沃な農地が広がり,米作,果樹栽培,野菜栽培,畜産などが盛んな農業地域です。また,多様な泉質の温泉が各地域にあることから,交流促進の地域としても期待されます。
 このため,認定農業者や集落営農の育成,市全体を範囲とする農業公社による農地流動化や新規就農者の育成などを進め,効率的で安定した魅力ある農業経営を目指す農業の振興に努めます。加えて,地域間の道路交通網の整備,地域特有の歴史・文化・風土及び多様な泉質の温泉を活かした観光・交流の推進,田園市街地の形成及び住宅地の整備などを進めます。さらに,森林の持つ多様な機能を活用し,森林資源の質的な充実と活力ある林業の育成を図り,森林の持続的な経営・管理とその多面的な利用を推進します。
 以上のことにより,「水と緑と温泉に抱かれた,美しく趣のある田園地帯の形成」を基本として,区域の特性にふさわしい産業の振興,豊かで多様性に富んだ田園地帯の整備に努めます。

  (3) 海洋文化ゾーン(川内沿岸部及び甑島区域)
 「水産業の安定的な発展と海洋性の観光レクリエーションゾーンの形成」
 この区域は,東シナ海の恵まれた海洋資源を基に水産業が盛んに行われている一方,変化に富んだ海岸線,甑島等の美しい景観,地域特有の歴史・文化等の資源を活かした個性ある観光地づくりが進められています。
 このため,高級魚介類(カンパチ,シマアジ,アワビ等)を主体とした養殖業や加工・流通体制の強化,水産資源供給基地としての地位の確立,新規就業者や後継者の育成・確保など水産業の振興に努めます。
 また,九州新幹線鹿児島ルートや南九州西回り自動車道の全線開通などの効果を最大限に導き出すため,観光資源を活かした自然とのふれあいや体験・滞在型観光を進めます。このほか,温泉と水産物の連携など,異質の資源の組合せによって付加価値を高め,現代人の嗜好に対応した魅力ある観光地や広域観光ルートの形成等を推進します。
 以上のことにより,「水産業の安定的な発展と海洋性の観光レクリエーションゾーンの形成」を基本として,本市の基幹産業としての水産業の振興と,自然や歴史・文化等の資源はもとより甑島の「癒しの空間」としての特性を十分に活かした観光地づくりを進めます。


 2 交流・連携軸
 本市内の連携及び市外との交流を活発化させるために,高規格幹線道路,地域高規格道路,主要幹線道路,都市核道路やこれらを補完する道路の整備を促進し,本市における九州西岸交流軸,東西交流軸,地域連携軸の形成を図ります。
※都市核道路⇒川内市街地の2環状8放射道路網などの都市文化ゾーン等における幹線道路網のこと。各地域から川内市街地へ,あるいはインターチェンジ等へのアクセス向上のための道路

  (1) 九州西岸交流軸
 南九州西回り自動車道の早期整備や国道3号(隈之城バイパス),国道328号の改良整備,九州新幹線鹿児島ルートの早期全線開業,肥薩おれんじ鉄道の利用を促進し,北部九州と県都鹿児島市を結ぶ全九州を視野に入れた人とモノの交流を促進します。

  (2) 東西交流軸
 本市内の連携及び市外との交流の活発化を図るために,「甑島交流ライン」及び「川内川交流ライン」の形成を図ります。また,鹿児島空港への利便性向上やアジア方面との交流を促進するために,「空港アクセスライン」及び「アジア交流ライン」の形成を進めます。



※甑島交流ライン
  • 甑島と川内港とを結ぶ航路の開設に向けた調査・研究
  • 川内港〜新幹線川内駅間の交通アクセスの向上
  • 地域間交流の促進
※川内川交流ライン
  • 国道267号,県道43号川内串木野線,県道44号京泊大小路線,県道394号山崎川内線の整備促進,地域高規格道路の指定促進
  • 川薩グリーンロード(広域営農団地農道)の整備促進
  • 川内川アクアフロント構想(21世紀新かごしま総合計画)による観光ルートの設定やイベントの共同開催による交流の推進
※空港アクセスライン
  • 空港連携線(川内空港間)の整備促進
※アジア交流ライン
  • 川内港とアジア地域を結ぶ定期航路の拡充と産業,経済,学術,スポーツ等の多様な交流の推進

  (3) 地域連携軸
 本市内の連携を活発化させるために,港湾や南九州西回り自動車道インターチェンジなどの交通拠点を結ぶ幹線道路網を構築し,「都市核道路」・「川内〜樋脇連携ライン」・「川内〜入来〜祁答院連携ライン」・「川内〜東郷連携ライン」・「東郷〜樋脇連携ライン」・「東郷〜樋脇〜入来連携ライン」・「甑島縦貫ライン」の形成を図ります。
 ※都市核道路
  • 宮崎バイパス(川内都IC関連)など川内市街地の2環状8放射道路網の整備及び整備促進
※川内〜樋脇連携ライン
  • 県道36号川内郡山線,県道42号川内加治木線,県道333号川内祁答院線の整備促進
※川内〜入来〜祁答院連携ライン
  • 県道42号川内加治木線,県道333号川内祁答院線,県道462号堂山宮之城線の整備促進
※川内〜東郷連携ライン
  • 県道339号東郷西方港線の整備促進
※東郷〜樋脇連携ライン
  • 阿久根〜東郷〜樋脇〜郡山連携線(県道46号阿久根東郷線,県道335号市比野東郷線,県道36号川内郡山線,県道39号串木野樋脇線等)の整備促進
※東郷〜樋脇〜入来連携ライン
  • 県道346号山田入来線の整備促進
※甑島縦貫ライン
  • 甑島縦貫道(県道348号桑之浦里港線,県道351号黒浜水深線,県道
  • 349号手打藺牟田港線)の整備促進及び藺牟田瀬戸架橋の建設促進


第2章 施策の基本方針

 地域の発展と市民福祉の向上を図るとともに,南九州の拠点都市としてふさわしいまちづくりを総合的かつ計画的に推進し,地方分権の進展に対応するため,「コミュニティ」,「保健福祉」,「教育文化」,「生活環境」,「産業振興」,「社会基盤」,「市民参画」,「都市経営」の八つの分野の基本方針を定めます。

第1節 コミュニティを活かし地域力を育むまちづくり

 新しいまちづくりは,市民一人一人が主役であり,生活の基盤となる各地区の活性化こそが本市全体の活力の源です。本市の自然・文化・人材などの貴重な資源を有効に活用したまちづくりを進めるには,市民自らがまちづくりに積極的に参画することにより,市民の意見や要望をより良く反映させることが必要です。
 このため,市民の自主的な活動を促進する仕組みづくりや組織体制の再構築を図ります。また,それぞれの地区コミュニティへの積極的な活動支援及び活動拠点施設の整備・充実を図るとともに,ボランティア団体やNPO等を育成・支援することにより,市民の社会参画を推進します。
 さらに,市民の地域社会やまちづくりへの参画を促すための広聴広報の充実と個人情報の保護に配慮した情報公開を推進するとともに,電子自治体の構築及び様々な機関との情報のネットワーク化の推進により,事務の効率化及び市民サービスの向上に努めます。
※地区コミュニティ⇒人々が共同体意識を持って地区活動を行う一定の地区のこと。本市では,48地区(旧小学校区・地区)を指す。

 1 地区コミュニティを活かした仕組みづくり
 市民が主体となった地域づくりを促進し,地域の自主的な活動と活性化を促すため,地区コミュニティ協議会と市との協働によるまちづくりの仕組みづくりに取り組みます。地区ごとに,それぞれの特色や資源の活用などの課題・問題点を話し合いながら,「地区振興計画」を自主的に策定し,その解決のため住民自らが主体的に活動することを基本に据えて,行政として可能な支援策を講ずる等により,コミュニティ機能の一層の充実を図ります。なお,自治会等の従来の活動についても地区コミュニティ協議会との連携を図りつつ進めるほか,地区コミュニティ相互の交流のための条件整備に努めます。
※地区コミュニティ協議会⇒各地区のあらゆる分野の団体が連携を強化し,これまでの地区の活動を見直しつつ,更なる地区の活性化を図るための組織
※地区振興計画⇒それぞれの地区の実情を最も知っている住民自らが,それぞれの地区の特色を活かしながら地区の将来がどうあるべきかを話し合って「地区振興計画」として取りまとめるもの

 2 コミュニティ活動等への支援強化
 コミュニティ活動を積極的に支援するとともに,自治会への加入を促進します。また,ボランティア団体やNPOにおける様々な活動の活発なまちづくりを目指し,ボランティア等の体験機会の創出を図るとともに,多面的な支援体制の充実を進めます。さらに,広聴広報の充実と情報公開を積極的に進める等により,市民の意見を取り入れる仕組みを確立するとともに,市民自らの創意工夫を活かした市民参画型社会の形成を推進します。

 3 コミュニティ活動環境の整備
 各地区におけるコミュニティ活動の拠点的な施設として,「地区コミュニティセンター」の整備・充実を図り,地区ごとの話合い活動の場としての活用や伝統行事,イベント,市民交流などの場として活動しやすい環境づくりに努めます。

 第2節 健康で共に支え合うまちづくり

 すべての市民が,住み慣れた地域・地区の中で健やかに暮らせるまちづくりを進めることが必要です。
 このため,保健・医療・福祉に関する様々な施策・事業の充実を図るとともに,市民が自ら進んで行動し,共に助け合い,支え合う社会システムづくりを進め,誰もが安心して暮らせる福祉社会の構築に努めます。
 また,高齢者・障害者及び健常者の生きがいづくりに関する施策の推進,学童保育の推進,相談体制の確立や子育て支援ネットワークの広域化,少子化対策の推進及び地域医療機関の確保や救急医療などの医療サービス体制の拡充に努めます。

 1 保健・医療の充実
 「自分の健康は自分で守る」という市民の健康に対する意識の高揚や,疾病に対する予防知識の普及と啓発を図るため,地域ごとに保健センターの整備・充実を図るとともに,各種保健事業の拡充により市民の健康づくりを推進します。また,都市文化ゾーンにおける総合的な高度医療施設の充実を促進するとともに,特に甑島区域の診療所の経営統合や病床数の増による病院化,医療機器整備による医療体制の強化,あるいは救急患者搬送などの救急医療体制の充実を図ります。さらに,情報通信技術を活用して各地の医療機関・診療所等の連携網の形成を図りつつ,保健師・看護師等の専門性を備えた人材の育成・確保に取り組みます。

 2 社会保障の充実
 市民の健康と老後の生活を支える年金・健康保険・老人保健・介護保険事業の健全な経営に努めるとともに,医療費の増大を抑制するための健康づくりを推進します。また,介護保険制度に基づく各種サービスの充実を図ります。なお,国民年金については,年金制度の普及啓発に努め,加入を促進します。

 3 地域福祉社会の形成
 市民が共に助け合い,支え合う社会システムの一環として,ボランティア活動の支援・人材育成に努めます。また,生活保護制度の適正な運用,福祉に関する総合的な施設や温泉を活用したリハビリテーション施設の整備などを進めます。さらに,高齢者や障害を持つ人が安全・快適に暮らせる環境づくりを進めるため,公共施設等におけるユニバーサルデザイン化を推進します。
※ユニバーサルデザイン⇒老若,健常者・障害者のわけ隔てなく誰もが利用しやすい「すべての人のためのデザイン」のことで,「障害,障害者」に対する人々の意識を変えようと,デザインにおけるバリアフリー(段差や仕切りをなくすなど障壁のない状態)の概念をより一般的にしたもの

 4 高齢者福祉の充実
 高齢者が健康で生きがいを持って生活できるように,給食サービスや生きがい対応型デイサービスなどの高齢者福祉事業の継続的な実施を図ります。また,安心して暮らせる生活環境・医療・生涯学習体制等の総合的な整備を推進し,高齢者が生きがいを感じながら主体的に社会参加できる環境づくりを進めます。

 5 子育て支援・児童福祉の充実
 核家族化,少子化等の社会環境の変化により世帯構成が多様化していく中で,安心して子どもを産み育てるとともに,子どもを健やかに育てることのできる環境づくりを進めるため,関係機関との連携の下に地域ぐるみで取り組める体制の整備を進めます。また,子育て支援ネットワークの広域化を進めるとともに,子育て支援施設の整備強化や多様な保育サービスの充実に取り組みます。さらに,ファミリーサポートセンターの設置等により,子育てと仕事の両立を支援します。
※ファミリーサポートセンター⇒育児等について,援助を受けたい人(依頼人)と行いたい人(支援人)が会員となり,相互に助け合い,仕事と育児等を両立できる社会環境を目指すための制度

 6 障害者(児)福祉の推進
 社会の一員として障害者の人権が尊重され,家庭や地域の中で安心して生活できる環境づくりを進めるために,市民の意識啓発活動を促進しながら福祉施設の整備や各種サービスの提供及び支援体制の充実,さらに障害児の早期療育体制の充実に努めます。また,公共施設等におけるユニバーサルデザイン化などの環境整備を行うとともに,社会的・経済的に自立するための学習環境の充実や就業機会の確保,訓練施設の整備や雇用条件の改善など総合的な施策を展開します。

 7 母子寡婦・父子福祉の充実
 児童扶養手当・医療費の助成や相談機能などの周知を図り,生活の安定を支援するとともに,就業相談を進めるなど,母子寡婦・父子家庭の福祉向上を図り,経済的な自立を促進します。

 第3節 地域の特色を活かした教育・文化のまちづくり

 生涯を通じて自らの個性と能力を伸ばし,いきいきとした人生を築きたいという意識の高まりへの対応を図るとともに,豊かな心・国際的な広い視野・創造力を持った魅力ある人材を育む教育・文化のまちづくりが求められています。
 このため,「まちづくりの原点は人づくり」との観点に立ち,市民と行政の協働による豊かな人間性を育む幼児教育・学校教育,社会教育及び地域に根ざしたふるさと教育の充実や教育施設の整備等による教育環境の充実を図ります。特に,家庭での教育力を高めながら家庭,学校,地域が一体となった教育や青少年の健全育成を進めます。
 また,いつでも,どこでも,誰もが生涯にわたり多様な学習機会やスポーツ・レクリエーション活動を楽しみ,加えて,その学習成果を活かせる活動の場の確保等の支援体制,人材バンクの整備及び派遣制度の普及など生涯学習体制の充実強化,各地域・地区で受け継がれている伝統芸能・伝統文化の保存継承を図ります。さらに,広い視野を育てる交流活動を推進し,人材の育成や個性のある地域づくりに努めます。
※人材バンク⇒専門的知識などを有する指導者を登録し,市民に対して適切な指導者を紹介する仕組み

 1 生涯学習の推進
 人々の学習に対する関心の高まりにこたえ,すべての人々が生涯にわたり日常的に多様な学習ができ,その学習成果を活かせる活躍の場を確保する等の環境づくりを推進するため,生涯学習の広域的な展開・ネットワーク化を図ります。また,拠点施設の充実を図り,内容の充実に努めます。特に,地区・地域において,社会教育・生涯学習活動推進の中心的役割を担っている生涯学習に資する事業を行う機関及び団体との連携に努め,市民の学習を積極的に支援し,団体・グループ相互の連携を促進します。

 2 社会教育の促進
 社会の著しい進展に人々が柔軟に対応していくために,実生活に即した,生涯各期にわたる幼児教育,青少年教育,成人教育,高齢者教育及び近年特に重要視されている家庭教育を促進します。

 3 人権の尊重
 すべての人々の基本的人権は,憲法で保障されていることから,人権問題を人々が身近な問題としてとらえるよう,地域・学校などあらゆる場において人権教育活動を展開します。また,人権問題を正しく理解するために,積極的な人権問題への取組や啓発,広報活動を行い,人権に対する市民の意識の高揚を図ります。

 4 幼児教育・学校教育等の充実
 幼児教育については,郷土の自然を愛する心豊かな幼児の育成を目指します。学校教育の面では,小規模校と大規模校の混在,特認校制度や複式学級の存在等の各地域の事情を踏まえながら,各地域の特色を活かします。また,家庭での教育力を高めつつ家庭,学校,地域が一体となった教育を進め,児童生徒一人一人の個性と多様な能力を伸ばすための教育活動を推進するとともに,教育環境の整備に努めます。さらに,市内の高等学校の振興を図るとともに,国際化教育や情報教育などを進め,新しい時代に対応できる人材の育成に努めます。高等教育機関については,教育内容の充実,地域の企業との連携・交流を促進します。
※特認校制度⇒小規模校入学特別認可制度により,自然環境に恵まれた小規模の小中学校で,心身の健康増進を図り,豊かな人間性を培いたいという保護者の希望がある場合には,通学状況や生活指導面など教育的な配慮の上,市内に住んでいる児童生徒が,通学区域に関わりなく,誰でも入学申込みをできる制度。

 5 青少年の健全育成
 健全で心豊かな人間性を育むために,家庭教育・学校教育はもとより,地域・地区における世代間交流,青少年を守る活動,あるいは青少年活動等を促進・啓発しながら,家庭を中心に学校,地域の三者が一体となった青少年の育成を図ります。

 6 地域文化の保存・継承
 地域の伝統芸能や文化は,それぞれの地域に根ざした資源であり,特色であることを踏まえ,愛郷心を培いながら,引き続き保存・伝承の取組を支援するとともに,本市が一体となった新たな文化の創出とネットワーク化を図ります。また,地域の文化的資源を活用したまちづくりや文化的資源相互の連携を図り,文化施設の充実とネットワーク化を推進します。

 7 スポーツの振興
 市民それぞれの体力に応じて,生涯にわたりスポーツに親しむことで,個々の健康の維持・増進を促進するために,運動公園や体育館などの体育施設,レクリエーション施設の整備・充実を図ります。また,スポーツクラブの育成や各種大会の開催を通じて,市民スポーツや健康スポーツの振興,スポーツ交流の推進に努めるとともに,地域に根ざしたスポーツ団体の強化・振興を図ります。

 8 交流活動の推進
 国際交流や国内・地域間交流など広範な地域との交流は,新しいまちづくりを進めるに当たり,地域に刺激を与え,新しい価値を生み出す活力となります。このため,こうした交流活動を積極的に進めることにより,他地域との結びつきを深め,地域に活力とにぎわいを創出します。

第4節 誰もが安心して快適に暮らせるまちづくり
 本市は,海,山,川,湖,温泉などの豊かな自然環境資源に恵まれています。こうした豊かな環境と快適な生活との両立を前提にしながら南九州の拠点都市として発展していくためにも,一層の生活環境の整備が求められています。
 このため,市民生活における安全の確保をはじめ,自然環境の保全,上下水道の整備などを進め,災害に強い,誰もが安心して暮らせるまちづくりを市民との協働により推進します。また,地球環境への負荷を軽減するため,市民・事業者と行政が協働して省資源やリサイクルなどに努め,資源循環型社会の構築を図ります。

 1 防災・生活安全対策の充実
 台風や集中豪雨,地震等の自然災害に対する不安から,市民の生命と財産を守るための体制づくりと基盤整備が求められています。防災体制の充実・強化を図るとともに,自主防災組織等の育成を図ります。また,防災行政無線の統合や消防資機材の一層の充実を図るとともに,関係機関との連携・協力の下,迅速な消防救急活動など危機管理体制を構築することにより,災害に強い,市民が安心して暮らせる生活環境づくりを進めます。特に,原子力発電所やLPG(液化石油ガス)基地等のエネルギー供給基地としての役割を担っている本市においては,これらの施設との共生を図りながら安全運転の確保,事故防止体制の徹底を設置者に促すとともに,国・県との協力による防災体制の充実に努め,市民の安全確保と環境の保全を図ります。さらに,消費生活の安全確保のための消費生活相談の充実等を図るとともに,交通安全意識や防犯思想の高揚と併せて,人にやさしい安全なまちづくりを進めます。
※防災行政無線⇒市町村が防災情報を収集し,また,住民に対して防災情報を周知するために整備している無線ネットワーク

 2 環境対策の充実
 本市の有する豊かな自然環境を保全し,環境監視の充実などに努めるとともに,太陽光や風力などの自然エネルギーの積極的な導入を進めます。また,環境問題に対する意識の高揚を図るために,生涯学習と連動した環境学習を推進するとともに,環境美化活動等への支援充実を図ります。さらに,葬斎場の整備や適正な維持管理及び墓地の整備を進めます。

 3 ごみ処理の充実
 ごみの減量化や再資源化を図るために分別収集活動を推進するとともに,ダイオキシン対策を施した焼却施設や粗大ごみ処理施設,水処理施設等の適正な維持管理,最終処分場の整備を図り,環境負荷の軽減に配慮した資源循環型社会の構築を目指します。

 4 下水道・生活排水処理対策の推進
 下水処理施設の適正な維持管理及び設備更新に取り組むとともに,地域の特性に応じて,公共下水道,合併処理浄化槽,農業・漁業集落排水事業などの計画的な整備及び普及を促進し,快適な生活環境と河川等の水質の保全に努めます。

 5 安定した水・温泉利用対策の充実
 安全な水の安定供給のために,水資源の確保や安全性に配慮した水道施設の維持管理に努めるとともに,水源となる河川等の水質保全活動の強化や水源かん養林の保護を進めます。また,簡易水道も含め水道事業の統合・整備を図り,水道事業の管理体制の強化を目指します。さらに,温泉施設,農業用水・工業用水施設等の整備及び適正な維持管理と利用促進に努めます。

第5節 地域力を発揮し産業活力を創出するまちづくり

 本市の発展を支え,活力と活気を生み出す源は産業活動にあります。また,多様な雇用機会の確保・創出は,若者の定住や人口の増加,経済社会の安定のための重要な条件となります。
 このため,本市の最大の資源である豊かな自然を活かした農業や水産業,さらに各種製造業,サービス業など多種多様な地場産業の「地域力」を十分活用し,民間活力を発揮できるような創造性あふれる産業の展開を図り,市内で循環する経済構造を創出することで,本市の自立的な発展を目指します。

 1 薩摩川内経済圏の創出
 産業・経済の活性化を図るためにも,本市内での経済循環を活発化させ,域内産業の連携を高めることによる地域経済の底上げが求められています。そのため,市内事業者の利用促進と本市内における新しい流通体制の構築により,市内で生産されたものを市内で消費するという,顔の見える「地産地消」の取組を進めます。また,これまでの農畜産物,加工特産品等の個別ブランドに加え,地域の活力につながる新たなブランドの掘り起こしを行い,総合的な薩摩川内ブランドを形成します。さらに,食材供給基地としての地位を確立するための情報発信機能を拡充し,積極的にPRすることで,消費市場の拡大を図るとともに,ブランド力の底上げと市民や市内産業に対する本市の求心力を高めます。

 2 農業の振興
 地域農業の安定的かつ継続的な振興を図るという観点に立ち,優良農地の流動化,経営規模の拡大や新規就農者の育成などの農業政策を市全域で総合的に実施・支援する農業公社の充実を図ります。また,地産地消を基本とした流通体制の確立や,土地改良事業等による農業生産基盤の整備など,活力のある農業の振興を図ります。さらに,農業農村の持つ国土や自然環境の保全,文化伝承などの多面的な機能を活かした農村振興を推進します。

 3 林業の振興
 森林の持つ多面的・公益的機能をより発揮するため計画的な森林整備に努めるほか,自然環境の保全に留意しつつ林道の整備を図ります。また,早掘りたけのこ等の地域資源の有効活用による特用林産物の産地化を図ります。さらに,地域で生産された木材を使用した「地材地建」の取組を促進します。

 4 水産業の振興
 海面漁業はもとより,川内川を中心とした内水面漁業のつくり育てる漁業及び経営感覚に優れた水産業の担い手の育成・確保に努めます。また,漁業経営の安定に向けてキビナゴ,チリメン,ウナギ,アユ等の水産加工の高度化やブランド化を推進し,地産地消を基本とした新しい流通体系の構築を図ります。特に,水産資源の維持・かん養,その拠点となる漁港の適正な維持管理と整備改修,漁場の整備に取り組みます。

 5 商工業の振興
 商工会議所や商工会と連携し,新しい時代の変化に対応できる商業の経営体質の強化を図るとともに,TMOを中心とした中心市街地の活性化,地域を支える商店街の形成や経営基盤の強化を促進し,市民の日常的な生活を支える商業環境の維持・向上に努めます。工業については,既存企業の活性化を図るため,各種制度,施策を有効に活用するとともに,地場産業の体質強化に努め,その育成を図ります。また,鹿児島市と九州北部を結ぶ中継地域として情報産業・製造業等の企業育成・誘致を図ります。さらに,地場産業を含む多様な業種の民間企業や大学,研究機関の交流を活性化し,これに伴う新たな業種・業態の転換や海洋深層水の活用というような成長分野を中心とした新規産業の立地を促進します。雇用・就業環境については,ファミリーサポートセンターの設置やシルバー人材センターの充実,労働情報の提供などを進め,様々な就業形態に対応するように努めます。
※TMO⇒中心市街地活性化法に基づき,商業関係者が組織する機関のこと。中小小売商業高度化事業構想を策定し,それを具体化した事業計画が国の認定を受けることによって,補助金や免税措置などの支援措置を受けることができる。タウンマネージメント機関ともいう。
※海洋深層水⇒大陸棚沖合いの水深200メートルより深い層にある海水で,水温が低く清浄で,栄養素を多く含むなどの特性がある。清涼飲料水等への利用において,事業化が図られるとともに,水産養殖への活用,健康食品などへの利用のほか,冷却水としての活用などに関する調査・研究が進められている。

 6 観光の振興
 自然環境の保全に配慮しながら,九州新幹線鹿児島ルートや南九州西回り自動車道の全線開通を見据えた交流人口の拡大を図るため,海,山,川,湖,温泉や歴史的・文化的資源など市内の様々な地域資源を有機的にネットワークさせた観光ルートの形成を進め,滞在型保養観光都市の形成を目指します。具体的には,甑島の美しい景観の演出,雄大な海岸線,趣のある温泉街などの連携を図りながら,農林業や水産業等の体験型観光を推進するとともに,宿泊施設や文化施設,スポーツ・レクリエーション施設等を活用したスポーツ大会や合宿,各種会議(コンベンション),フィルムコミッション等の誘致に取り組み,併せて「もてなしの心」の醸成など,受入態勢の整備を図ります。また,きやんせふるさと館等の物産販売所の機能充実及び連携を促進するとともに,海洋深層水を活用したタラソテラピー施設等の調査・研究,観光客が気軽に利用・宿泊できる施設の充実や,民間団体等との連携強化による観光振興体制の強化,観光情報の効果的な提供に努めます。
※フィルムコミッション⇒映画やドラマ,コマーシャルなどの撮影活動を誘致・支援し,映像化による地域のイメージアップ,ロケ隊による経済効果,市民参加による地域の活性化を図ろうとするもの
※タラソテラピー⇒海辺に滞在して,その景観を楽しみながら,海洋性気候の下で海水,海藻,海泥等の資源を用いた様々な療法を行う自然療法

第6節 都市力を創出するまちづくり

 本市の潜在力の発揮を図るとともに,快適で利便性の高いまちづくりを進めるためには,情報通信基盤を含めた都市機能の向上を図ることが必要です。
 このため,住宅・公園の整備や都市計画マスタープランに基づく都市計画事業等の実施により機能的かつ個性的な魅力あふれる美しい都市空間を創出し,都市拠点性と総合的な魅力を一層高める取組を市民と共に進めます。
 また,九州新幹線鹿児島ルートや南九州西回り自動車道の波及効果を本市及び周辺地域の活性化に活かすため,本市への定住を促進しつつ,重点的かつ一体的な幹線道路網の整備を図るとともに,交通ネットワークの更なる充実を目指します。併せて,港湾機能の向上と利用の拡大を図ります。さらに,安全で安心して暮らせる都市の形成を目指し,河川改修,砂防急傾斜地対策に取り組みます。
※都市計画マスタープラン⇒都市の発展の動向,人口・産業の現状及び将来の見通しや住民意向を反映させて,長期的な視点に立った都市の将来像を明確にし,土地利用や都市施設などの配置及び整備,その他の都市計画の基本的な方針を示すもの

 1 住環境の整備
 公営住宅等の維持管理体制の充実を図るとともに,速やかな入居情報の一元化や若者,高齢者等のニーズに対応した住宅の整備を進めるほか,民間との連携・協力による良好な住宅・宅地の供給を促進し,本市の均衡ある発展のための定住拠点ネットワークの形成を図ります。また,県都鹿児島市の隣接都市としての発展策,あるいは甑島の振興策として,本市への定住を促進するための対策に取り組むとともに,がけ地近接住宅などの移転等の対策も進めます。

 2 公園緑地の整備
 公園緑地,スポーツ・レクリエーション施設等については,各地域の主要な施設をネットワーク化することによって市内外の利用者と市民の交流の場などとして,多様な積極的活用を図ります。また,生活に身近な自由空間(オープンスペース)や子どもの遊び場としての公園施設等の整備充実,適正な管理体制の構築を図り,身近な生活環境の向上に努めます。

 3 道路・交通ネットワークの整備
 九州新幹線鹿児島ルートの早期全線開業や肥薩おれんじ鉄道の利用を促進し,広域交通網の充実を図ります。また,本市の一体感の醸成や本市内の連携,市外との交流を促進するために駅,港湾,インターチェンジなどの交通拠点の周辺を整備するとともに,これらを結ぶ都市核道路をはじめとする幹線道路網のネットワークを整備します。この幹線道路網については,生活道路との区分を図り,市外との交流強化,渋滞の緩和に努めながら,温泉街などの観光拠点へのアクセス強化など地域活性化へ結び付ける基盤整備を図ります。さらに,すべての人が快適に不自由なく移動できる交通ネットワークを構築するために,特に,川内駅を中心として他の交通拠点を結ぶ路線バスの運行を促進するとともに,交通弱者等の移動手段の確保のために各地域におけるコミュニティバス等の運行の維持・強化に努めます。また,水上交通網の調査・研究や新幹線川内駅との交通アクセスの向上を図ります。さらに,甑島を一つに結び,各島における経済・社会活動の相互連携の強化,住民の生活圏拡大に資するため,藺牟田瀬戸架橋の建設及び甑島縦貫道の整備を促進します。

 4 市街地等の整備と拠点づくり
 にぎわいある都市づくりを目指し,駅や港湾などの交通拠点と一体となった中心市街地等の整備を行うとともに,商業・教育・文化・医療・行政等の多彩な機能を有する新たな拠点地区の形成を推進します。また,各地域の中心地についても,利便性が高く快適な市街地の形成を図ります。

 5 河川等の整備
 河川等の整備については,本市の持つ多様な自然環境の保全を図りながら,市民が安全・快適に生活できるよう,親水・治水機能の強化と河川舟運の活性化を目指し,まちづくりと一体となった改修を図るとともに,土砂災害から人命を守るための砂防・急傾斜地対策に取り組みます。さらに,水辺のうるおいのある環境・景観づくりを進めます。また,川内川市街部改修については,都市計画マスタープランに基づき整備を促進します。

 6 港湾施設の充実及び利用促進
 川内港の港湾機能の充実を図るとともに,南九州における中国・韓国及び東南アジアとの貿易,流通拠点として定期航路を拡充します。また,西方・里・江石・桑之浦・長浜港等の港湾機能の向上等に努め,人とモノが行き交うにぎわいのある港湾として整備を進めます。

 7 情報通信基盤の整備
 各種行政手続や広報紙の電子化等,行政サービス水準の向上を実現するとともに,生活関連情報等を提供するなど市民生活をより便利にする施策を展開します。また,情報拠点施設の整備について研究を行います。特に,甑島においては,双方向性・即時性を活かした医療体系,福祉サービスの強化や防災行政無線の統合を図りネットワーク化するなど,便利で安心できる市民生活の確立に向けた取組を進めます。一方,産業面については,観光施設の情報化,電子モールの整備等を進め,特産品情報や観光情報を市内外に効果的に発信できる体制づくりを進めるとともに,地域企業の情報化を支援するなど民間における情報通信技術の利用を促進します。また,市内において情報通信格差が生じないように,インターネット環境面からは光ファイバー網の民間企業等による早期整備を働きかけるとともに,テレビ難視聴解消等のためにCATV局の設置を,移動体通信サービスにおいては通話エリアの拡大を促進します。

 8 土地の有効利用
 本市の秩序ある発展のため,国土利用関連法令に基づく県等の計画との調整を図りつつ,都市的・農地的・森林的・自然的土地利用の区分けを明確にし,都市計画法や農業振興地域の整備に関する法律等との関連を考慮しながら,土地利用に関する規制・誘導の指針として国土利用計画等を策定し,広域的な土地利用体系の確立を目指します。また,土地利用の総合調整,都市計画区域等の調整,地籍調査の推進,公共事業用地の計画的な取得等用地行政の充実を図ります。

第7節 みんなで進める市民参画のまちづくり

 地方分権の進展により自治体の自主的な活動範囲が広がる中で,市民ニーズも多様化し,まちづくりの進め方も行政主導から,市民と行政の役割分担の下でまちづくりを展開することが求められています。
 このため,新しい「対等と協力」の視点から市民と行政の関係を見直し,より良いまちづくりの方向を見極め協働していくことが必要であり,情報を共有し,知恵を出し合い,役割を分担し,まちづくりの実践に向けた体制の充実を図ります。

 1 市民参画の推進
 まちづくりの主役である市民との協力関係(パートナーシップ)を築くため,個人情報保護の下に情報公開制度の充実を図り,市民の「知る権利」を最大限に尊重する開かれた市政の推進を図ります。また,市政モニター制度やパブリック・コメント制度の導入,地区コミュニティ協議会との対話の場の設定など行政サービスの内容や将来計画などに関する市民の意見を直接聴取する機会を拡充します。さらに,自治基本条例の制定に向けての検討を行い,透明で効率的・効果的な行政活動を目指します。
※市政モニター制度⇒広く市民の皆様の意識を把握するため,モニターの方々にアンケート調査などを行い,今後の市政経営の基礎資料として活用しようとするもの
※パブリック・コメント制度⇒行政機関が政策の立案等を行おうとする際に,その案をあらかじめ公表し,この案に対して広く意見や情報を提出していただく機会を設け,提出された意見等を考慮して最終的な意思決定を行うというもの
※自治基本条例⇒「自治体の憲法」として市政経営の基本理念や基本方針などを条例として定めるもの。市政への市民の参画の在り方等に関する規定を有しているものが多い。

 2 男女共同参画社会の形成
 人々の意識や行動,社会の制度において性別にとらわれることなく,男女が共に参画できる社会の実現に向けた施策を展開します。このため,公的・私的分野を問わず,社会のあらゆる場への女性の参画を支援する体制づくりや人材育成,女性の意見を市政に反映させるための広聴体制の整備等の取組を進めます。また,家事や介護,地域社会活動等へ男女が共に参画できる環境づくりを目指し,活動支援施設の充実,意識改革・雰囲気づくりのための啓発,広報活動等を展開します。
※男女共同参画社会⇒男女が社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され,均等に政治的,経済的,社会的及び文化的利益を享受でき,かつ,共に責任を担うべき社会のこと。

第8節 持続可能な行財政運営の推進と政策形成能力の向上によるまちづくり
 右肩上がりに成長を続けた社会から,安定した成熟社会に入った我が国経済社会においては,公共的活動を行政が独占的に直接担う時代から,民間と行政が公共的活動を共有し,それぞれの役割を果たす「協働社会」の時代へと移行し始めています。これを踏まえて,市政改革大綱に基づき,市が果たすべき役割について抜本的な見直しを行い,持続可能な行政システム(組織・制度)への転換を図ります。
 また,今後の財政改革の指針として薩摩川内市財政健全化計画・中長期財政運営指針を掲げ,徹底した行財政改革を推進して行政の効率化を図り,持続可能な財政運営のできる財務体質を持った南九州の拠点都市へと生まれ変わります。

 1 実効性の高い行政経営等の推進
 いわゆる地方分権一括法により,国及び県から市町村に権限移譲が推進されつつあり,事務量の増大が予想される中で,変化に速やかに対応する行政経営を図ることが求められています。そのため,市政改革大綱に基づき実効性の高い行政経営を図るとともに,事務事業評価制度を確立し,適切な行政組織機構の見直しを随時行います。また,市職員全体で事務改善,接遇改善,経費節減といった改善活動に取り組みながら市民サービスの維持向上に努めます。
 市有施設の整備・管理については,適正な配置と運営の効率化を検討し,必要に応じ改修・整理を行います。民間団体等への管理委託やPFIを含むPPP等の民間を活用した事業方式を積極的に研究・導入します。
 また,定員適正化計画を策定し,職員数及び人件費の適正化に努めるとともに,人材育成基本方針を策定し,職員の資質向上を図り,市民サービスの向上に努めます。
※PFI⇒Private Finance Initiative(プライベート-ファイナンス-イニシアチブ)の略称。これまでの公的部門による社会資本の整備・運営に民間資本や経営ノウハウを導入し,民間主体で効率化を図ろうという政策手法のこと。
※PPP⇒Public Private Partnership(パブリック-プライベート-パートナーシップ)の略称。公共と民間とが共同して公共サービスを効率的かつ効果的に提供する事業化手法のこと。

 2 健全で安定的な財政運営の推進
 多様化する市民ニーズに的確に対応しながらも最少の経費で最大の効果を挙げるという基本的な方針に立ち,財政健全化計画・中長期財政運営指針を踏まえた貸借対照表(バランスシート)などの財務情報の提供により,財政運営の透明性を高めながら,歳入・歳出の徹底した見直しを図り,健全な財政運営を進めます。

第3章 基本構想の実現と薩摩川内市の連携の強化に向けて
      〜薩摩川内一体化躍動プラン

 施策の八つの「基本方針」に基づき,将来都市像の実現と本市の9地域の連携の強化に向けた施策を「薩摩川内一体化躍動プラン」として定め,重点的かつ戦略的に取り組みます。
 なお,この「薩摩川内一体化躍動プラン」は,「基本方針」の八つの分野体系を横断した四つのプロジェクトから成ります。

 1 地域力再生プロジェクト
 地域が本来持っている自然や歴史・文化などの財産や市民活動などの「地域らしさ」をこれまで以上に育むまちづくりを展開していくために,地区単位のコミュニティの活性化や生涯学習による人材の育成,市民が郷土の歴史や文化に触れる機会の創出に取り組みます。また,安心して生活できるような健康づくりを促進し,救急医療体制,福祉サービス,環境対策の充実を図ります。

 2 都市力創出プロジェクト
 本市の持つ道路・交通網や港湾,公園・河川空間等の拠点的機能,その他市民生活を支えてきた生活・産業基盤を市全体で分担・連携することにより,魅力の高い都市機能の充実を図ります。また,定住促進や地域情報化に取り組み,各地域の均衡ある発展に努めます。

 3 交流活力創出(都市ブランド力向上)プロジェクト
 人,自然,歴史,文化など埋もれた宝を掘り起こし,これらに磨きをかけ,市民一人一人が情報発信源となって,本市の情報発信を積極的に行い,全国における薩摩川内市の認知度を高めることにより,住むことに誇りを持てるまちづくりを進め,「都市ブランド力」を高めます。
 また,農林水産業,観光,スポーツ,芸術文化,商工業などの各分野において,情報発信力のある多様な人材を計画的に育成し,まちづくりへの参画を促します。
 さらに,「地域力」を育て「都市力」を発揮できるように地域間の連携を強化するとともに,九州新幹線鹿児島ルートや南九州西回り自動車道の全線開通を見据え,魅力ある人材,食材,温泉等を活用しながら,交流人口の拡大を図り,市民の一体感の醸成に努めます。
※都市ブランド力⇒都市名が単なる名称であることを超えたイメージを持つに至っているものであり,独自の価値と魅力を感じさせ,受け手が「住みたい」,「訪れたい」,「ビジネスをしたい」という具体的行動を起こす気持ちを誘引する力

 4 市政改革プロジェクト
 地域の暮らしや教育,文化,まちづくりなどの公共的活動を行政が独占的に直接担う時代から,市民や地区コミュニティ協議会,NPO,ボランティア,企業等の民間と行政が公共的活動を共有し,それぞれの役割を果たす「協働社会」の時代へと移行しはじめています。市が果たすべき役割について抜本的な見直しを行い,都市経営,市民サービス,協働・市民参画の視点から市政改革に取り組み,経済の活性化,地区の振興及び親しまれ信頼される市役所を導き出しながら,持続可能な行政システム(組織・制度)への転換を図ります。