地方が大きな転換期を迎え,緊急を要する大きな行政課題として全国で市町村合併が進められる中,川薩地区法定合併協議会での協議を経て,平成16年10月12日,川内市・樋脇町・入来町・東郷町・祁答院町・里村・上甑村・下甑村・鹿島村の1市4町4村が合併し,薩摩川内市が誕生しました。
合併協議会では,関係市町村の総合計画等の基本構想及び過疎・辺地等の個別計画を踏まえながら新市を建設していくための基本方針を定め,その実現を図ることにより,新市の速やかな一体化を目指し,地域の発展と市民福祉の向上を目的として,市町村の合併の特例に関する法律に基づき薩摩川内市まちづくり計画を策定しました。
薩摩川内市総合計画は,薩摩川内市まちづくり計画を可能な限り尊重するとともに,将来の発展に向けて,今後10年間の本市まちづくりの指針として新たに策定するものです。
また,総合計画は,市が直接実施主体となる施策・事業を基本としますが,必要に応じて,他の事業主体の施策・事業を包括するものとします。なお,国,県その他公共的団体や民間等に期待する分野等についても明示します。
その範囲は,本市がなすべき施策を中心に,市民,民間,他の公共団体等と協力しながら行う範囲も含み,市政経営の指針となるものを目指します。
計画の目標年次は,平成26年度とし,上期と下期の各5年に分けてまちづくりの指針を示します。
第1節 薩摩川内市を取り巻く社会情勢
また,物流のスピード化を図るため,海陸一貫物流情報システムなど,情報通信技術を活用した運輸・交通基盤施設等の整備や輸出入手続窓口の一本化等を促進する必要があります。
中国・常熟市及び上海市嘉定区馬陸鎮(まるちん)と友好関係にある本市でも,今後の南九州西回り自動車道等の整備を考慮しながら,これらの動きに対応して,川内港の整備や定期航路の拡充等を計画的に進めることが必要です。
とりわけデジタル技術をはじめとする情報通信技術の急速な発展に伴い,保健・医療・福祉,教育,防災等生活に身近な様々な分野で情報化が進み,本格的な高度情報化社会が到来しようとしています。地方自治体においても,国の電子政府化の推進を受け,行政の情報化,ネットワーク化の推進が図られ,電子自治体の構築に向けた取組が進められています。
しかしながら,情報通信技術の普及は,一方で情報格差を社会的にもたらしつつあります。今後は,こうした情報格差の解消のための情報通信基盤の整備等に取り組むとともに,市民への情報伝達,事務事業の効率化,情報発信などにおいて,情報通信技術を積極的に活かした取組が必要です。また,個人情報保護のセキュリティ体制整備が急務となっています。
※ブロードバンド(broadband)⇒高速な通信回線の普及によって実現される次世代のコンピュータネットワークと,その上で提供される大容量のデータを活用した新たなサービス
※ユビキタス(ubiquitous)環境⇒あらゆるモノにコンピュータが埋め込まれ,ネットワーク化されることで,いつでも,どこでも,誰でもやりたいことが自在にできるIT環境
合計特殊出生率※は長期的な低下傾向が続き,平成15年の人口動態統計月報年計(概数)によると1.29となっており,本県においても同年で1.49と,少子化の傾向が強まっています。主な要因としては,社会進出する女性にとって子どもを産みにくく,育てにくい社会の構造的な特徴に根ざすところが深いとされています。
一方,平成15年10月1日現在における高齢化率※をみると,本県は24.0%となっており,全国平均の19.0%よりもかなり速いテンポで高齢化が進んでいます。中でも本市の高齢化率は25.4%と本県平均より高くなっています。
※合計特殊出生率⇒15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので,一人の女性が生涯に何人の子どもを産むか推計した値に相当し,この数値が2.08を下回ると,将来的に現在人口を維持することができないとされている。
※高齢化率⇒総人口に占める65歳以上の高齢者の割合
また,企業は,生産拠点の海外移転等,世界規模で事業展開しており,特にアジア地域との関係を深化させていくものと考えられます。そのため,国内産業の生産部門の空洞化も進行しています。
このような産業の空洞化と,国際的な競争の激化,情報化,知識集約化,技術革新の進展を背景に,我が国の産業構造は大きな転換を迫られており,経済的規制の撤廃・緩和による開かれた経済社会への転換が強く求められています。
地方においては,高度化した産業技術の地域産業への積極的な導入を図るほか,新しい発想の下で地域資源を有効に活用した産業の展開を進めるとともに,産業を支える人材を育成するなど,自立的に発展する地域産業の振興に取り組むことが求められています。
大量生産・大量消費・大量廃棄型の生活様式や経済活動を見直し,豊かな恵みをもたらす美しい海・山・川を後世に伝えるため,自然との共生と環境への負荷の少ない循環型社会への転換を図り,地球的視野から暮らしを考え,行動することが求められています。
また,労働時間の短縮や平均寿命の伸長等による余暇時間の増加,核家族化の進行等により,生活様式も多様化してきており,生活のゆとりやうるおいを重視しながら,個性的で創造的な生き方を求める傾向が強まっています。
このため,自立した個人が,自己責任の下に,自分らしい生き方や暮らし方を選び,実践していける自己実現の場や,選択の機会の創出が求められています。また,市民自らが主体となった地域づくりを促進し,地域の自主的な活動と活性化,価値観の多様化を見据えたまちづくりを進めていくことが重要になっています。
身近な行政施策をできる限り市民に近い自治体において処理すべく,自治事務と法定受託事務の再編,権限移譲の推進,補助制度の見直し等,抜本的な行政制度の改革が進められた結果,自治体による政策判断,政策遂行における自己責任能力の重要性が高まっています。
国から地方への税源移譲,国庫負担金の廃止・縮減,地方交付税制度の見直しを検討する,いわゆる「三位一体改革」が推進されている中,市町村への権限移譲については,人口規模に応じて段階的に権限を移譲していくものとされています。地方交付税制度についても,段階補正(団体規模)の見直しや,いわゆる構造改革の効果論から見た適正人口規模等,地方財政制度の抜本的改革が進められようとしています。
また,市民一人一人の多様な生き方や考え方が反映される市民参画のまちづくりを進めていく必要があります。男女が対等な社会の構成員として認め合い,支え合い,その個性と能力が十分に発揮できるよう「個人の尊重」と「男女平等」に基づく男女共同参画を,あらゆる場において進めていくことが重要となっています。
※NPO⇒民間非営利組織のことで,営利を目的としない公益的な市民活動などを行う組織,団体
1 薩摩川内市の特性
本市が有するこれらの多彩で美しい自然環境は,川内川流域県立自然公園,藺牟田池県立自然公園,甑島県立自然公園に指定され,人々に親しまれています。
また,このような厚みのある歴史・文化を背景に,有島三兄弟や山本實彦など多くの文化人を輩出してきました。
これらの歴史的・文化的資源を誇りにし,地域の宝として更に磨きをかけて情報発信を積極的に行い,まちづくりに活かすことが求められています。
また,中国・韓国及び東南アジアとの貿易・流通の拠点としての将来性のある川内港を有しており,九州新幹線鹿児島ルートや南九州西回り自動車道等の高速交通体系との相乗効果により,南九州西岸地域の拠点となる国際貿易港としての発展が期待されています。
本市の工業製造品年間出荷額は,平成15年では鹿児島県全体の
9.7パーセントを占め,ICパッケージ※,産業用機械部品,電子部品や紙・パルプの製造業が主なものとなっています。
近年では,IC関連産業などの企業進出が進み,先端技術産業の集積が図られつつあります。
※ICパッケージ⇒ICはIntegrated Circuit(集積回路)の略。シリコンで作られている集積回路を保護するため,絶縁性が高く,焼成固化することで丈夫な封入殻を形成するファインセラミックスによる外殻包装(パッケージ)
平成16年3月には九州新幹線鹿児島ルートが一部開業(平成22
年度全線開業予定)し,交流人口の増大,通勤圏の拡大などを視野に入れた施策展開が可能になりました。さらに,平成18年度には南九州西回り自動車道薩摩川内都インターチェンジの供用開始が控えており,本市への社会的・経済的効果が期待されています。
高速交通体系の整備によって,福岡・熊本はもちろんのこと鹿児島市との時間的距離が短縮され,定住促進施策,交流人口拡大施策等について都市間の競争が激しくなってきます。将来の都市間競争の激化に適切な対応をしていくためには,都市規模を拡大するスケールメリット※を活用し,その競争力を高めることが必要です。そして,地域の一体的なまちづくりや財政基盤の強化による「都市力」の強化が不可欠となります。
また,基礎自治体として10万人規模を基準にした権限移譲や地方交付税制度の見直しが進められており,南九州の拠点都市である本市も,県土の均衡ある発展のため中核的な役割を担っていくことが求められています。従来よりも増した地域浮揚が望まれており,可能な限りの高い目標を掲げて全体的なまちづくりを進め,自然・歴史・伝統・文化などの地域資源を活かしながら都市規模の拡大による相乗効果を導き出し,市民や市内事業者の活力を生み出す必要があります。さらに,行財政運営の効率性の向上によって得られた余剰資源を文化的活動や福祉活動等に還元し,市民生活を一層快適にする必要があります。
※都市力⇒類似の資源が集まることによる規模拡大の効果の発揮や異なる資源が融合することによる相乗効果の発揮によって,都市としての魅力が向上すること。
※スケールメリット⇒規模を大きくすることで得られる利益
また,様々な権限移譲に伴い市の事務量は増加し,さらに新しい分野での事務の発生や,より専門的な判断機会の増加などが予想されます。地方分権に対する適切な受皿づくり(行政機構の強化・財政基盤の強化)を進め,組織自体の強化を図るとともに,まちづくりの進め方も,行政主導から市民自らのまちづくり,市民と行政の役割分担へと転換させることで,多様化する市民ニーズに対応していく必要があります。